去年の正月、初めての同窓会が開かれて37年前の級友達と会った。そこでの記憶が今頃になって文を書かせる。

人間というやつは心の弱さからか、コンプレックスの裏返しからなのか、理由はよくわからないが偶像(あるいはスター)を作り、崇拝したがる。

当時から背が高く、運動神経がよく、勉強もデキた"イワサキ"はどこか冷たい感じのする美人で、黙っていても目立ち、例に漏れず男子(および女子)たちの憧れであり、嫉妬の対象だったようだ。わしが仲良くしていたK子の友人であり、イワサキとK子とあとマロ(だったか?)がその学年の男達に特別扱いされるマドンナ3人娘だったように思う。わしとK子とは小学校も違い、中2までは別のクラスだったので面識はなかったが、3人娘の存在は1年生のころから他のクラスにも知れていたように覚える。中2でK子と同じクラスになり、急速に親密になったので自然、イワサキやマロとも接近遭遇するようになったのだが直接に話したことは殆どない。実のところ当時のわしはツンと澄ました感じのするイワサキがどこか好かないと思う少年だったのである。

37年を経て会ったイワサキは黒いパンツスーツに身を包み、ショートカット。宝塚の男役のように颯爽としていて、立ち振る舞いもキビキビと美しい。だらしなく年をとって膨らんでしまった周りのおばはん共と同じ種類の人間とは思えなかった。「やっぱりこの人間は特別だったんだ」と驚いた。

会を主催する側の立場にいたので忙しく動き回っていたが、時間ができるとわしのところにやってきて、当時の懐かしい話や過去現在の共通話題であるK子の話をする。親友K子の一応モトカレ(w)なので気を使ってくれたのであろうが、よく考えてみれば、この同窓会にいるということは同じ小学校だったんだ・・・何だ、小学校から知っていたわけか。しかし昔に直接話した記憶はほとんどない、もしかしたらこの日が初めてかもしれないとさえ思う。

小5でこの地に転校してきて中2で他所に出て行ったジプシーのようなわしは、この会に来ている連中の記憶には薄いはずだ。「誰?」と聞かれて「松蔭だ」と答えると半分以上は「あぁ〜ん、松蔭ね」と言いながら、すぐにさっきまでの話題に戻っていく。わしの親が転勤族だったので、長らく一緒に記憶を共有する連中が集まる時、この様なの会では、わしはぽつんと一人になってしまいやすいのだ。それがわかっているので本当はそんなに来たいと思って参加した会ではない。「ああ、またかよ。」わしは自分から「ボク、寂しいよぅ。混ぜて混ぜて〜」などとやるほうでもないから、この日イワサキが話しに来てくれたのは助かった。同窓会でぽつんと孤独に身を置くなんて寂しいもんだ。ふん、平気だけどね。

イワサキは連れ(夫?)と同時刻何か別の場でやっていることにもいそがしいらしくお開きを待たずに去って行った。
「まわりが、勝手に、祀り上げてしまうから・・・」話のなかでぽつりとつぶやいた。この人はきっと子供の頃からずっと意図せずとも、どこに行ってもスターだったのだろう。そして、それがイヤでたまらなかったのだろう。この人も端目には華やかでいながら「ワタシは本当はそんなんじゃないのに」と孤独に身を置いてきたのかもしれないと思う。