床屋を覗くと二人待ちだった。ひとりでやっている床屋では、まだ小一時間は後になりそうである。小腹が空いていたので一旦離れてコンビニへ向かった。数日前から無性に食べたいと思っていた、あの「悪甘いチョコかけ揚げ菓子」を探すが見当たらない。なのでATMの用事とタバコだけを求めて、さらに近所のスーパーへと移動した。短距離の行ったり停めたりに都度都度ヘルメットとグラブの着脱を伴うオートバイは面倒な乗り物だ。あった。80円から釣りの来る安さは流石福岡市の老舗スーパー、庶民の味方であるという認識をさらに強める。昼食用のインスタント麺と一緒に茶色いサイドバッグの左側に詰める。
再び先程のコンビニへ珈琲を買いに戻る。少しエスニックな顔立ちの中年女性店員が刹那見せた「あ、また来たこの人」という眼差しを感じ取れる、人間の感覚というものは素晴らしく鋭敏でそれ故にまた、時に邪魔なものだ。
左に傾ぎ停めたままのオートバイに跨る。紅いメタリックのガソリンタンクは全部が滑らかな曲面で構成されているので珈琲テーブルには向かないが、2度3度置き直してカップが安定する場所を決めた。跨ったまま身体を捻ってサイドバッグから揚げ菓子を取り出し、しばしの寒空オープンカフェを楽しむ。2メートルほど離れた所に停めてあった駕籠付き自転車の持ち主が戻ってきた。普通に美しい、若い女性だが、こちらをチラと見やる怪訝そうな表情が残念ながら彼女の持っているであろう魅力を半分以下にした。ニコリと笑って「寒いですね」とでも言えば会うもの皆んながいい日を過ごせるだけの容姿なのに愚かだな、と思う。
本格的な冬が近いと感じさせる空気のなかに身を晒しながら甘い揚げ菓子を齧っては熱い珈琲を胃に流し込む、それを繰り返すうちに何故だ、ほわんとした気分、いや、気持ちだけではない、明らかに軽い酩酊状態のようなものがやってきた。丁度、すきっ腹に2〜3杯のビールを流し込んだくらいの酔い。自分でその状態の訪れに少し驚きながらも「OLEOを食べるときにはドラッグを使用した時と同じく大量の脳内麻薬が湧出する」という記事を思い出した。あぁ?これもそうなのか?
このチョコかけ揚げ菓子(分類はパン)はリョーユーの「マンハッタン」というもので、九州一円のひとたちのソウルスイーツである。竹下製菓のアイスバー「ブラックモンブラン」と双璧をなすはずである。子供の頃から食べつけて来た味は忘れがたい。まるで依存性があるかのように時々無性に身体が欲しがる。いや、脳だ。脳が欲しがるのだ。つまりこれは合法ドラッグなのだ。
私は少しほわんとしたままの状態でオートバイを床屋へ向けた。
再び先程のコンビニへ珈琲を買いに戻る。少しエスニックな顔立ちの中年女性店員が刹那見せた「あ、また来たこの人」という眼差しを感じ取れる、人間の感覚というものは素晴らしく鋭敏でそれ故にまた、時に邪魔なものだ。
左に傾ぎ停めたままのオートバイに跨る。紅いメタリックのガソリンタンクは全部が滑らかな曲面で構成されているので珈琲テーブルには向かないが、2度3度置き直してカップが安定する場所を決めた。跨ったまま身体を捻ってサイドバッグから揚げ菓子を取り出し、しばしの寒空オープンカフェを楽しむ。2メートルほど離れた所に停めてあった駕籠付き自転車の持ち主が戻ってきた。普通に美しい、若い女性だが、こちらをチラと見やる怪訝そうな表情が残念ながら彼女の持っているであろう魅力を半分以下にした。ニコリと笑って「寒いですね」とでも言えば会うもの皆んながいい日を過ごせるだけの容姿なのに愚かだな、と思う。
本格的な冬が近いと感じさせる空気のなかに身を晒しながら甘い揚げ菓子を齧っては熱い珈琲を胃に流し込む、それを繰り返すうちに何故だ、ほわんとした気分、いや、気持ちだけではない、明らかに軽い酩酊状態のようなものがやってきた。丁度、すきっ腹に2〜3杯のビールを流し込んだくらいの酔い。自分でその状態の訪れに少し驚きながらも「OLEOを食べるときにはドラッグを使用した時と同じく大量の脳内麻薬が湧出する」という記事を思い出した。あぁ?これもそうなのか?
このチョコかけ揚げ菓子(分類はパン)はリョーユーの「マンハッタン」というもので、九州一円のひとたちのソウルスイーツである。竹下製菓のアイスバー「ブラックモンブラン」と双璧をなすはずである。子供の頃から食べつけて来た味は忘れがたい。まるで依存性があるかのように時々無性に身体が欲しがる。いや、脳だ。脳が欲しがるのだ。つまりこれは合法ドラッグなのだ。
私は少しほわんとしたままの状態でオートバイを床屋へ向けた。